就労支援事業所とは?A型事業所とB型事業所の違いについても詳しく解説
目次
就労支援事業所とは
就労支援事業所は、障害のある方や難病を抱えている方、その他様々な理由により一般企業への就職が困難な方が利用可能な障害福祉サービスとなります。
各施設は障害者総合支援法に基づいて運営されており、「就労移行支援」と「就労継続支援」に大別されます。
就労移行支援事業所
就労移行支援では、就職するために必要なスキルを身につけるサポートを行います。
対象者は「障害のある方」、「難病のある方」となり、年齢や利用期間に制限があります。
詳しくはこちらの記事をご参照ください。
就労継続支援事業所
就労継続支援では、就労の機会の提供、生産活動の機会の提供を行っています。
対象者は「一般企業への就職が困難な方」となり、更に「A型事業所」と「B型事業所」に分かれます。
本記事では、こちらの「就労継続支援事業所」をメインテーマとして、対象となる方の条件、サポート内容の違い、実際に利用するための方法等について解説していきます。
就労継続支援B型事業所の概要
B型事業所の特徴
B型事業所は、障害の程度や体調に応じた柔軟な働き方を提供する施設です。
利用者は雇用契約を結ばず、事業所より提供された作業を行うことで工賃を受け取る契約形態となっています。
雇用契約での縛りがないため、「1日1時間、週に数回だけ」というように、体調に合わせて働き方を調整することが可能です。
対象となる利用者の条件
B型事業所の利用対象者は、一般企業への就職が困難で、且つ雇用契約を結んで働くことが困難な方となります。
対象者の年齢には制限がなく、重度の障害を持っている方でも利用することが可能です。
提供される支援内容
B型事業所では、以下のような支援が提供されます:
– 職業訓練:作業スキルの向上を目的とした訓練が行われます。例えば、軽作業や製品の組み立て、パソコン作業など、個々の能力や興味に応じた訓練が提供されます。
– 生活支援:日常生活のスキル向上を目的とした支援が行われます。具体的には、健康管理や金銭管理、コミュニケーションスキルの向上などが含まれます。
– 社会参加支援:地域活動やレクリエーションを通じて、社会参加の機会が提供されます。これにより、利用者は社会とのつながりを持ち、孤立を防ぐことができます。
A型事業所との違い
A型事業所とB型事業所の違い
A型事業所とB型事業所は、どちらも就労支援を行う施設ですが、その仕組みや提供される支援内容には大きな違いがあります。
例えば、A型事業所では、利用者が事業所と雇用契約を結び、給与を受け取る形で働きますが、B型事業所では、雇用契約を結ばず、作業を行うことで工賃を受け取る形で働きます。
このようにA型とB型で利用条件や賃金、提供されるサービス等に違いがありますので、この章で詳しく解説していきます。
対象者の違い
前述のおさらいとなりますが、両施設には以下の通り対象となる条件が異なります。
– A型事業所:一般企業への就職は困難だが、雇用契約を結んで働くことは可能な方が対象となります。
– B型事業所:一般企業への就職が困難で、且つ雇用契約を結んで働くことも困難な方が対象となります。
雇用形態
– A型事業所: 雇用契約を結び、労働基準法に基づいた給与設定や労働条件が適用されます。利用者はアルバイトやパートタイムのように扱われ、福利厚生も提供されることがあります。
– B型事業所: 雇用契約は結ばず、作業に対して工賃が支払われます。労働基準法の適用はありませんが、利用者の健康状態や能力に応じて柔軟に働ける環境が整っています。
賃金の違い
A型事業所では雇用契約を結ぶことになる為、各都道府県ごとに定められている最低賃金以上での給与が発生することになります。
一方、B型事業所では雇用契約は結ばない為、給与という形式での賃金は発生せず、作業した量や時間に応じて工賃が支払われます。
A型事業所の場合、就労時間や日数がある程度決められているため、働く時間が多くなる代わりにB型事業所に比べて平均賃金も高くなります。
なお、厚生労働省が公表している令和4年度の賃金の実績については、以下の通りとなります。
– A型事業所:平均月額賃金は83,551円、時間額は947円でした。
– B型事業所:平均月額工賃は17,031円、時間額は243円でした。
年齢制限
A型事業所では、各施設に設定された定年年齢に応じて年齢制限が設けられています。
B型事業所では、年齢制限に上限はないものの、下限には定めがあります。
各事業所で年齢制限の違いがあるのは、雇用契約の有無による差となっており、雇用契約を結ぶことになるA型事業所の方が、より年齢にも制限が設けられているということになります。
– A型事業所:原則18歳以上65歳未満 ※条件により65歳以上でも利用可能
– B型事業所:原則18歳以上で上限の定めなし ※条件により15歳以上からでも利用可能
作業内容
– A型事業所:パソコンを使った入力作業、飲食店の接客・調理、ホテル・マンションの清掃等、一般企業の仕事内容と大きく変わりありません。
– B型事業所:農作業、簡単な清掃、雑貨作りのような手工芸等、A型事業所と比べて軽作業であることが多いです。
上記はあくまでも一例であり、利用する事業所により提供している作業の内容は異なります。
詳しい作業内容を確認したい方は、ご利用を検討している事業所へお問い合わせください。
A型事業所とB型事業所の違いまとめ
下記に、A型事業所とB型事業所の違いをまとめた図表を示します。
A型事業所 | B型事業所 | |
対象者 | 一般企業での就労は困難だが、雇用契約を結んで働くことは可能な方 | 一般企業での就労が困難で、且つ雇用契約を結んで働くことも困難な方 |
雇用形態 | 雇用契約あり | 雇用契約なし |
賃金 | 給与として発生 | 工賃として発生 |
年齢制限 | 原則18歳以上65歳未満 | 原則18歳以上 |
作業内容 | 一般企業に近い業務 | 軽作業 |
B型事業所の利用方法
利用申請の手順
B型事業所の利用を開始するためには、まず利用申請が必要です。
以下の手順で進めることが一般的です:
1. 主治医への相談:利用する際に診断書は不要ですが、B型支援事業所を利用することを事前に相談しておくことで、利用時のメンタルケア等についてのアドバイスを得られる可能性があります。
2. B型事業所を探す:インターネットでポータルサイトや行政の公開している事業者情報等から検索することが可能です。また、お住まいの地域の障害福祉窓口で紹介してもらうことができる場合もあります。
3. 問い合わせ・見学:就労支援事業所は利用できる人数に限りがあるため、定員オーバーで利用できない可能性があります。施設によっては施設見学や体験会等も開いていますので、合わせて定員の空き状況についても確認しておくと良いでしょう。
4. 利用申請を行う:就労支援事業所を利用するには、自治体が交付している「障害福祉サービス受給者証」が必要になるため、利用する事業所を見つけたら、お住まいの地域の障害福祉窓口で利用申請を行います。
※利用申請には「サービス等利用計画書」の作成が必要になります。これは地域の相談支援専門員が作成する書類となりますので、お近くの相談支援事業所までご相談ください。(〇〇市 相談支援事業所で検索可能)
5. 事業所と契約して利用開始:受給者証の発行後、利用する事業所と契約を結び、利用開始となります。
利用開始までの流れ
利用開始後は、事業所のスタッフとともに具体的な支援プランを作成し、日々の活動が進められます。
初めは見学やオリエンテーションが行われ、事業所の雰囲気や作業内容に慣れていきます。
その後、個別の支援計画に基づき、具体的な訓練や作業が始まります。
支援事業所では、利用者一人ひとりの状況やニーズに合わせて柔軟に対応し、定期的に支援計画の見直しが行われます。
ただし、それでも作業内容が合わないこともあると思いますので、そういった状況になった場合は、すぐに職員へ相談しましょう。
B型事業所のメリットとデメリット
B型事業所のメリット
1. 柔軟な労働環境:B型事業所では、利用者が自分の体調やペースに合わせて働くことができます。これにより、体調に変動がある場合でも、無理なく仕事を続けることが可能です。
2. 各サポート:専任の支援員が常駐しており、職業訓練や生活支援を受けることができます。利用者一人ひとりの状況に合わせた個別のサポートが提供されるため、安心して利用できます。
3. ステップアップの支援:B型事業所での訓練を通じて、一般就労へのステップアップを目指すことができます。多くの事業所では、利用者が自信を持って一般就労に移行できるよう、段階的なサポートが行われています。
B型事業所のデメリット
1. 工賃の低さ:B型事業所で受け取る工賃は、一般的な給与と比べて低いことが多いです。これにより、経済的な自立が難しい場合があります。しかし、工賃は支援の一部であり、訓練やサポートを受けることで将来的な就労の可能性を高めることができます。
2. 一般就労へのハードル:一般就労への移行を目指す際には、B型事業所での訓練や経験だけでは不十分な場合があります。特に、競争率の高い就職先を目指すのであれば、追加の訓練や経験が必要となることがあります。
まとめ
本記事では、就労支援事業所B型の基礎知識からA型事業所との違い、実際の利用方法、そしてメリットとデメリットについて詳しく解説しました。
B型事業所は、一般就労が困難な方が自分のペースで働きながら支援を受けられる重要な施設です。
A型事業所とは異なり、雇用契約を結ばずに働くため、柔軟な働き方が可能であり、様々な就労支援を受けられる点が大きな特徴です。
B型事業所の利用を検討している方やその家族の方は、まず地域の障害福祉サービス事業所や医療機関に相談してみてください。
事業所の見学会や説明会に参加し、具体的な支援内容や事業所の雰囲気を事前に確認することもおすすめします。
これらのステップを踏むことで、適切な支援を受けながら、自分に合った働き方を見つけることができるでしょう。